地元の倍の家賃を「大丈夫でしょ」で決めた結果——上京1年目の家計のリアル

地元の倍の家賃を「大丈夫でしょ」で決めた結果——上京1年目の家計のリアル(夜の東京の街並みイラスト) 上京・部屋探し

先に言っておくと、僕は部屋選びに後悔はありません。オンライン内見で即決した部屋に、2年住んで満足しています。

ただ、家賃だけは失敗しました。

僕の家賃は、地元で住んでいた部屋の約2倍です。地元は駐車場代込みで5万円でした。それが上京して、ほぼ倍。

この数字を見たとき、僕がどう思ったか。

「まあ、稼げばいいし。大丈夫でしょ」

大丈夫じゃありませんでした。この記事は、その記録です。毎月赤字、ボーナスで補填、スーパーで肉を買うか悩む生活。これから上京する人に、僕と同じ「大丈夫でしょ」をやってほしくないので、正直に書きます。

なぜ倍の家賃を「許容範囲」と思えたのか

振り返ると、あのときの僕には金銭感覚のバグがありました。

地元の家賃相場が、体に染みついていたんです。5万円あれば駐車場込みでそれなりの部屋に住める世界で、社会人生活を送ってきました。その感覚のまま、東京の物件情報を見る。すると、どの物件も高い。何を見ても高い。

そして人間は、高い数字を見続けると麻痺します。

10万円という基準は、自分で決めたものではありませんでした。

僕は職場からの近さを最優先に探していました。そのエリアで、自分の条件に合う物件を見ていくと、出てくるのがだいたい10万円前後。だから、いつの間にか「このへんなら10万円くらいするもの」が基準になっていました。

予算を決めてから物件を探したのではなく、物件を見ているうちに、相場の方が僕の予算になっていた。今思えば、ここが分かれ道でした。

そして地元の倍の数字を前にして、感じたのは「高すぎる」ではなく「まあ、許容範囲か」。

もうひとつ、決定的だったのは「稼げばいい」という発想でした。転職して上京する、つまり収入も新しくなる。だったら生活レベルが上がっても、これから稼いで追いつけばいい。当時の僕はそう考えていました。

でも冷静に考えると、これは順番が逆です。まだ稼いでいないお金を、先に家賃で使う約束をしている。家賃は一度契約したら、毎月、確実に出ていきます。収入が追いつくかどうかは、そのとき分かっていません。

分かっていたのは「家賃が倍になる」という事実だけでした。僕はそれを、「大丈夫でしょ」の一言で流しました。

上京1年目の家計のリアル

最初の半年は、正直、危機感がありませんでした。

新しい仕事、新しい街、新しい生活。忙しさもあって、お金のことを深く考えていなかった。一応、家計簿はつけていました。つけていましたが、見ていませんでした。記録するだけして、振り返らない。今思えば、何のためにつけていたのか分かりません。

気づいたのは、半年ほど経ったころです。

貯金が、どんどん減っている。

慌てて家計簿を見返しました。そこには、毎月の収支がずっとマイナスで並んでいました。

「本当に毎月赤字じゃん」

絶望しました。予感が確信に変わった瞬間です。

そこからの生活は、細かい我慢の積み重ねになりました。

象徴的なのはスーパーです。悩むのは、ちょっとした贅沢品。肉を買うかどうか。アイスを買うかどうか。数百円の話です。商品棚の前で腕を組んで、買うか、買わないか、ずっと悩んでいました。数百円に、それだけの時間を使っていました。

家賃は毎月、確実に、自動で出ていきます。でも食費は自分の意思で削れる。だから削るのは、いつも食費や小さな楽しみの方でした。固定費の失敗を、変動費の我慢で埋める生活です。

それでも埋まらない分は、ボーナスで補填していました。

ボーナスが出た日は、もちろん嬉しいです。でも冬に、ボーナスが1ヶ月分もなかったことがありました。補填をあてにしていた金額が、入ってこない。「あぁ、お金足りない」と、また絶望しました。

ボーナスは会社の業績次第で変わります。保証されていないお金です。保証されていないお金をあてにしないと回らない家計を、僕は「大丈夫でしょ」の一言で作ってしまっていました。

それでも、引っ越さない

ここまで読むと、「じゃあ安い部屋に引っ越せばいいのに」と思うかもしれません。

引っ越しません。

理由はシンプルで、部屋自体には満足しているからです。職場から2駅、満員電車に長く乗らなくていい。最上階で、上の足音がない。この生活の質は、毎日効いています。家賃の失敗と、部屋選びの正解は、僕の中では別の話なんです。

それに、引っ越すにもお金がかかります。初期費用の記事で書いたとおり、引越しは家賃の数ヶ月分が一度に飛ぶイベントです。赤字の家計で、そのまとまったお金を作るのは簡単ではありません。家賃の失敗は、失敗したと気づいた後も、簡単には抜け出せない。これも含めて、家賃の怖さだと思います。

だから僕の結論は「物件は正解、家賃は失敗」。矛盾しているようですが、これが2年住んだ実感です。

これから上京する人へ

最後に、これから上京する人に伝えたいことを書きます。

最初の家賃は、守りでいい。

上京のタイミングは、収入も、生活費も、街の物価も、全部が未知数です。東京での自分の家計がどうなるか、住む前には誰にも分かりません。分からないのに、一番大きい固定費だけ先に確定させる。それが賃貸契約です。

だから、攻めるのは2回目からでいい。1年住めば、自分の東京の生活費が分かります。それから「もう少し家賃を出せるか」を判断しても、遅くありません。逆は難しい。上げた生活レベルを下げるのは、気持ちの面でも、引越し費用の面でも、簡単ではないからです。

あと、これは僕の反省ですが——家計簿は、つけるだけじゃなくて見てください。月に1回、合計を見るだけでいいです。僕はつけていたのに見ていなくて、気づくのに半年かかりました。

「まあ、稼げばいいし。大丈夫でしょ」

あのときの僕に言えるなら、こう言います。稼げるかどうかは、まだ分からない。分かっているのは、家賃が毎月確実に出ていくことだけ。決めていいのは、分かっていることの範囲まで。

それでも東京に来てよかったと思っているから、この記事を書いています。失敗したのは家賃だけで、上京は正解でした。

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